ブラッドオレンジとサフラン .リキュール アルコール度数：30%vol

感じること

ひと息で、理性がほどける。
熟れすぎたシチリアのブラッドオレンジ──
その罪深い甘さに、サフランの妖艶な深みが交わる。

これは、節度のための酒ではない。
静かな楽しみでもない。
礼儀など不要。

舌の上では、まるで唇。
見つけたばかりの夜のくちづけのように、
甘く、温かく、濡れていて、無遠慮。

一口ごとに、欲望が立ち上がる。
それは、禁じられた記憶の味。
皮膚の熱、指先のざわめき、
そして喉からうなじへと走る震え。

これは、誘いではない。
明確な挑発。
言い訳のいらない本音。
選んで口にする人は、
自分が何を望んでいるのか、
知っている人だ。

知ること

この背徳の液体は、太陽に育てられた。
シチリアの火山土に根を張る、
濃密な果実──ブラッドオレンジ。
甘く、苦く、情熱的。

加わるのは、二種のイラン産サフラン。
ネギン、そしてサルゴル。
その赤い糸は、人の手で一つずつ摘まれる。
丁寧に、慎重に、愛を込めて。

そこに、ひと滴のレモン。
香りを引き締める、鋭さと清涼。
そして、かすかな砂糖のまろみが、
全てを包み、開く。

この液体は偶然ではない。
意図と時間と欲によって、
ゆっくりと融合したものだ。

結果として生まれたのは、
常識をはみ出すほどに丁寧な、
恥知らずなほどに美味なリキュール。

味わうこと

この酒は、沈黙を破るためのもの。
会話を深くし、距離を縮め、
唇を重ねさせるためのもの。

冷たく、薄いグラスで。
もしくは誰も見ていない場所で、
そのまま、ためらわず、喉へ。

ディナーの最後に、罪のデザートとして。
ビターチョコレートや熟れたイチジク、
甘酸っぱい苺と共に──
その濃密な香りが、果実の誘惑を引き立てる。

または、氷と共に、最初の一杯に。
夜の扉を開く鍵として。

カクテルなら「ダーティ・サフラン・ネグローニ」。
苦みと甘さ、
ジンの硬質な香りが、
一杯を小さな背徳に変える。

この酒は、控えめではない。
率直で、裸で、挑発的。
欲と情熱、そのままの形。

ボトルに詰めた、本能のかたち。

香図書館 第八三六番
度数：30%vol
熟成可能期間：三〜五年
製法：リキュール
濾過：なし
植物名：シトラス・シネンシス（ブラッドオレンジ）
　　　　クロクス・サティブス（サフラン）