インガー・セレクション .スピリッツ アルコール度数：42%vol

感じること

一滴で、目が覚める。
明るく清らかな風が、口中に広がる。
微かなレモンの香り、異国の花の気配、
そしてその奥に、静かに息づく生姜の魂。

はじめの一口は、絹のように柔らかく、
舌の上にそっと身を沈める。
やがて、しなやかな熱が、内からゆっくりと脈打ち始める。
それは、生姜特有の辛みでありながら、決して粗くない。
むしろ、優雅だ。

重さはない。
層をなして香りが立ち上る。
澄んだ輪郭、くどさはなく、静かに、確かに、余韻を残す。
爽やかで、そして温かい。
ひとしずくごとに、驚きと、ときめきが残る。

この不思議なバランスは、
世界の匠たちをも魅了し、
名高い「デスティラータ」にて金賞を受けた。

知ること

すべては、ひとつの問いから始まった。
「澄んだままの、生姜の本質を、液体として表せないか。」

1990年代末。
旅と、試作と、終わりなき検証の日々。
答えを探し続けた三年が、
ついに私たちを、この一本へと導いた。

使うのは、生の生姜のみ。
選び抜かれた根を、一本ずつ手洗いする。
皮は、必要がなければ剥かない。
香りの油が、そこに宿るから。

産地は多様。
土も、雨も、風も、根に違いを与える。
だから、ロットごとに微細な変化がある。
それがまた、面白い。

静かに発酵させ、極めて穏やかに蒸留する。
そして三ヶ月、ただ眠らせる。
時のなかで、輪郭が澄んでくる。
複雑さが、しずかに整っていく。

この工程が、私たちの秘密であり、誇りだ。
唯一無二の個性は、そこから生まれる。

味わうこと

まずは、そのままで。
冷蔵庫から出してすぐではなく、
十二度ほどの、涼しい夜に。
ゆっくりと、言葉のいらない時間の中で。

もしカクテルを愉しむなら──
インガー・サワーを。

生姜スピリッツ 10cl、
搾りたてのレモン果汁 5cl、
シンプルシロップ 2cl、
パッションフルーツシロップを 1cl。
氷をたっぷり入れたシェイカーで勢いよく振る。
冷やしたグラスに注ぎ、
薄く切った生姜、またはレモンの皮で飾る。

夏の夜、親しい人と。
はじまりにふさわしい一杯になる。

食とも寄り添う。
刺身や寿司、白身魚に。
時には、ビターチョコレートにも合う。
生姜の熱が、ほのかにその香りを際立たせる。

一口で、あの日の旅を思い出す。
熱帯の市場、湿った石畳、
遠い夜。
あの時の「これは何か違う」という予感。
それが、今、舌の上にある。

香図書館 第七百十二番
度数：42%vol
熟成可能期間：三〜五年
製法：スピリッツ
濾過：あり
植物名：ショウガ（Zingiber officinalis）

（原材料：生姜と純粋アルコールのみ。添加物・香料・補助剤一切不使用。
本品が「スピリッツ」と表記されるのは、法的分類上「ブランデー」でも「ゲイスト」でもなく、独自製法ゆえのものである。）