


Stuttgarter Quitte .brand 44%vol
感じる
榲桲(マルメロ)は、忍耐を要する果実である。そして、その忍耐に静かで澄んだ悦びをもって応える。
細かい産毛の奥に隠れるざらついた外皮は、貴き何かの予兆である。
ほのかに渋い蜜の香、切り立ての柑橘、そして遠くに梨や熟れた林檎の気配。
口に含めば、その第一印象は静かなる驚き。冷ややかに舌を包み、やがて穏やかな温もりが喉奥にひろがってゆく。
一瞬の明澄──柔らかな甘み、繊細な酸、そして控えめな苦みが、心をほどき、同時に覚醒させる。
ふとよみがえる記憶。秋の午後、冷たい空気、冴えた光、そして初めてマルメロを見たあの日のこと。
その小さな感動──ただ嬉しく、ただ不思議だったあの瞬間。
知る
榲桲は語る。遠き旅と深き縁の物語を。
かつてはペルシャの地に根ざし、やがてはギリシャやローマの園へと、静かに歩みを進めた果実。
忘れられかけた今、その不器用さと手間のかかる性質こそが、価値となって蘇る。
我らの榲桲は、シュトゥットガルトとフィルダー高原の小庭で育つ。
秋の訪れ早きこの地に、節くれだった老木が根を張る。手入れはすべて人の手。
ひとつひとつの実に、注意深く、静かに寄り添う。
柔らかくも確かな手で、産毛を拭い、傷みを削り落とす。
その刃がほんの少しでも鈍ければ、香りは濁ってしまうことを、我らは知っている。
品種では選ばぬ。ただ、果実そのものと対話する。
ときに野趣あふれる林檎榲桲、ときに甘やかで愛らしい梨榲桲。
その年、その季節、その風に応じて、選ぶのは勘と感性。
与えるのは、時間と、手間と、敬意。
味わう
この榲桲の蒸留酒は、何かのついでではない。
特別な時間のための静かな伴。五感を満たす、小さな祝祭。
常温で、ゆっくりと。香りがひとつひとつ、静かにほどけてゆくのを待ちながら。
夏と秋のはざまの夕餉のあと、庭の灯が薄れ、語らいがやわらかくなる頃に。
あるいは──
熟成したコンテやペコリーノ、香ばしいアーモンドや、ほろりと崩れる焼き菓子とともに。
新しい記憶が生まれる。
過ぎし夏の話、忘れられた小道、
そして早秋の澄んだ寂しさ。
この榲桲酒は、あなたを誘う。
時の流れを味わうように。
果実に寄り添うように。
自分自身に向き合うように。
アロマライブラリー No. 140
アルコール度数: 44%vol
熟成ポテンシャル: 1~8年
製造: .brand
濾過: 非冷却濾過
学名: Cydonia oblonga
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